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Michael Lewis, Flash Boysに総反論を始めたTabb Group

昨夜書いたMichael Lewis(マイケル・ルイス)の新作Flash Boysや、そのプロモーションで出た60 MinutesやらNY Times Magazineやらで行っているHFTへの大批判に対して、Larry Tabb御大率いるTabb Groupが総反論を始めた感じ。米国でコンピュータを利用したホールセール向け取引では圧倒的に強い調査会社で、ずっと一線でオピニオンを出してきているだけに、正当かつフェアな情報提供が必要と見たか。そもそもTabb Forumというオープンに議論できる環境を提供していることもあり、批判の内容に今更感もあるのだろう。

で、下記、いずれもTabb Forumの記事なので、無償登録が必要かもしれない。ただし、登録してもさほど問題はない。むしろトレーディング関係者で登録してないほうがモグリぐらい。

まず、Larry Tabb御大のレポート。ご丁寧にPDFでも提供。

No, Michael Lewis, the US Equities Market Is Not Rigged :: TabbFORUM - Where Capital Markets Speak

そして、60 Minutesへの感想。60 Minutesは見てないが、こういった意見はそれこそ2009年のFlash Orderや2010年のFlash Crashで出た、というかHFTの批判では定番。

7 Things I Learned From 60 Minutes’ ‘Flash Boys’ Report :: TabbFORUM - Where Capital Markets Speak

そして、もう少し皮肉っぽい、Tabb Forum読者へのFlash Boysのインパクトのアンケート結果。映画化するならキャストは誰がよいか、などのわかりやすいものも。アンケートへの参加を求めるメールでは、April Fool’s Dayに公開、と書かれており、若干のネタも入っている。

Front Running ‘Flash Boys’: Measuring the Impact of Michael Lewis’s Latest Book :: TabbFORUM - Where Capital Markets Speak

Tabb Groupではないが、ThemisがBloomberg TVで行ったインタビューなどもTabb Forumには掲載されている。

High-Frequency Trading Neither Good or Bad: Arnuk :: TabbFORUM - Where Capital Markets Speak

私は数ページ読みだしたところだが、確かにどうも違和感がある。背景に見え隠れするのは、一般にウケるためNYSEを始めとする株式の取引所、そしてそのHFTについて書きたいようだが、どうも全く違うものを批判してように感じる点である。

  • 最初にNJーシカゴ間のファーバーの高速化の話があるが、株の取引所はほぼNJ、先物やオプションはシカゴ中心である。とすればアセット間の裁定の話で、一般的な投資家が利用する取引形態ではない。
  • そして、2007年頃が転換点と書いている一方で、上記のファイバーの話で出てくるLatencyのレベル感はもっと後の話。2007年はRegulation NMSが施行された年としては重要で、株式HFTが裁定を行いやすくなったのだろうが、スピード面では必ずしもここが転換点とはいえない。
  • そもそも2006〜2007年はRegulation NMSの施行に差し掛かった時代で、実際はそれ以前に多くのPTSや新興取引所がNYSENASDAQに買収されたり、EMS業者がGSなどの投資銀行に買収されたりと、当初の動きは起こった後。
  • 元々米国株式市場はNYSEスペシャリストや古いNASDAQが象徴するようにMarket Maker利用が一般的。Regulation NMS以降はリテール証券会社は(システム開発負荷の回避や最良執行、リベート入手の観点から)ほとんど自分で執行しておらず、Market Makerに注文を回送することで最良執行を達成している。そのMarket MakerはHFTであることが増えている。
  • それ故にHFTの影響をうけるのは機関投資家だが、彼らもアルゴである程度影響を回避している。最も一般的な機関投資家は中長期のトレンドで取引をするだろうから、両端の売買で多少損をしても本来の投資スタイルからすれば微々たるもののはず。
  • で、これは本来は一般的な個人投資家でも目指す態度、とバフェットもジム・クレイマーも言っている。
  • 米国株式市場全体では2009年ぐらいが出来高のピークで、最近は横ばいなのでHFTは儲かりにくい。そもそもオーバーコンペティションで、儲かる余地はあまりない。

かる~く感じるだけでもこれぐらいは上がってくる。そしてまだまだ誤解点ありそう。

HFTにBoyという呼称をつけたセンスは流石なのだが、そもそもがソロモンの債券セールスだけに、Michael Lewisも見誤ったのかもしれない。

Flash Boys: A Wall Street Revolt

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